こんにちは、イブです。
理系チックな記事です。
というかもはやマニュアルです。
試料分析に使用する装置“SEM”(セムと読みます)の使用方法をまとめました。
顕微鏡の一種なので、細かいものを観察する職のほか、大学の研究室なんかでも使用している人もいると思います。
今回は、簡単な言葉でざっくりとした原理と、使用方法のコツについて紹介します!
イブはたまにこの装置で製品を観察しますが、コツを覚えるまではきれいな像をみるために苦労しました。
装置にちゃんと詳しい人が周囲にいなかったのもあり、SEMについて勉強し、詳しくなりました。
イブは後輩の立場ですが、SEM観察については周囲の先輩や上司よりも詳しいです。
【こんな人に読んでほしい】
- SEMを使用する機会があるが、マニュアルといえるものがなく、なんとなく観察している人。
- 観察しようとすると白く光る、線が入るなどのトラブルに困っている人。
- 技術職、研究者でSEMを使用する機会があるが、まだあまり詳しくない..という人。
- ベテランよりは初心者、これからうまくなりたい人向けです。
SEMとは
走査電子顕微鏡(Scanning Election Microscope)といいます。
簡単に言うと“すごい細かいものが観れる顕微鏡”です。(数umサイズもで見れます)
通常の顕微鏡(光学顕微鏡といいます。中学校の実験で使うような、よくある顕微鏡)は肉眼で見えるものが大きく見えるようなイメージです。
それに対して、SEMで見た世界は肉眼とは全く違うように見えます。
白黒写真で表面がけばけばした画像が浮かびませんか?
それがSEMで観察したときの見え方です。
SEMの原理
SEMの基本的な原理
SEMは電子を使ってモノを見ます。(え?)
電子のビームを照射し、観察したいもの(試料)に当てます。
電子が試料に当たると、試料から別の電子(二次電子といいます)が飛び出します。
この二次電子は試料表面の凹凸によって出方に差がつくため、この二次電子を検出することで、表面の凹凸状態を知ることができます。
検出できる電子が多いほど像が明るくなり、明暗の差によって凹凸の差が分かります。
SEMの応用
電子を試料にあてた時に出るのは二次電子だけではありません。
反射電子
入射電子が試料中を散乱し、再び試料外部に飛び出したもの。
試料中の原子の原子番号により、反射電子の放出量が変わるので、組成の分析に使えます。
また、凹凸の観察にも使用できます。
特性X選
入射電子が試料中を散乱した際に、試料中の原子の持つ電子を弾き飛ばすことがあります。
そのバランスを保つために元素の持つ別の電子が空いた場所へ移動しますが、その時に余分なエネルギーが放出されます。
この余分なエネルギーは特性X線として原子から(というより試料から)飛び出します。
この特性X線のもつエネルギーは電子により決まっているので、そのエネルギーから試料を構成している元素の種類が分かります。
これを利用して試料の構成元素を分析することができます。(SEM-EDXといいます)
SEMのコツ
●ピントを合わせる
SEMは顕微鏡の一種なので、通常の顕微鏡と同様にピントを合わせて観察する必要があります。
ただし、拡大されすぎている像なので、ピント合わせが一筋縄ではいかないこともちらほらあります。
STEP1
倍率を小さくして、なるべく試料の広い範囲が捉えられるようにしてピントを合わせます。
また、ざっくりピントを合わせるにはピント合わせ(focus)をおおざっぱな範囲でなんとなく見える場所を見つけ、その後細かい範囲の調整をするといいです。
装置によってはピント合わせのピントの動かし方のレベルを変えることができると思います。
(highとかlowとかモードを選べるようになっていたりします)
この手順で合わせると、試料を見失うことが少なくなります。
STEP2
小さい倍率で試料になんとなくピントが合ったら、今度は観察したい場所を視野の中央にし、倍率を上げます。
試料を見失う手前で再度ピント調節をします。
これを観察したい倍率まで行います。
STEP3
観察したい倍率でピントを合わせたら、もう少し倍率を大きくしてそこでピントを合わせます。
(え、なんで。と思いますがやってみたらわかります)
その後、観察したい倍率まで戻すと、かなりクリアにピントが合った像が得られます。
一旦観察倍率よりも大きい倍率にするのは、ピントをより高い精度で合わせるためでした。
ちなみに、途中で試料を見失った場合は、倍率を小さくしてピント合わせをやり直すか、そのままピントをいろいろ動かして探すかどちらかになります。
慣れるまでは倍率を落として合わせなおす方が確実です。
●導電性の小さいものを観察する
SEMは基本的に導電性のあるものの観察に向いています。
電子を試料にあてるので、導電性のない試料の場合は表面に帯電してしまい、白く光った像になります。
(チャージアップといいます)
この状態では見たい部分を適切に観察できませんので、対処する必要があります。
①試料に導電性を持たせる
②低真空で観察できるSEMで観察する
①の方がきれいな像が見えるのでお勧めですが、試料への加工ができない場合は②の方法をとります。
①試料に導電性を持たせる
導電性のない試料の表面を導電性のある金属でコーティングすることにより、導電性を持たせます。
よく使用されるのはPt(白金)によるコーティングです。
Ptを蒸着により試料表面に付けるのが一般的です。
また、試料自体に高さがあり、表面と試料台(導電性あり)の導通がとれない場合は、Ptコーティングに加え、試料側面に導電性のテープなどを貼ります。
ただし、この方法は試料表面の微細構造(nmレベル)を破壊する場合があるので、そのあたりの大きさ以下を観察したい場合は避けた方がいいです。
②低真空で観察できるSEMで観察する
同じSEM装置で切り替えにより高真空、低真空どちらでも観察が可能な場合もあります。
SEMは電子を試料にぶつけたり、試料から飛び出した電子を検出するので、通常高真空で観察します。
(真空については”物質がほとんどない状態”をイメージしてください)
電子が途中で他の物質にぶつかってどこかに飛んで行ってしまうと観察できなくなるからです。
ところが、チャージアップを防ぐために、低真空(真空度を下げる=空間に存在する物質の量を増やす)にしてしまいます。
するとチャージアップしにくくなります。
<原理>
空間に存在する物質が増え、電子と存在する物質(ガスなど)がぶつかって、ガスなどが電離します。
その時にできた正電荷をもつイオンが試料表面にたまった電子と中和してチャージアップの程度がましになります。
●ピントが合っているのに像が見にくい
非点収差(スティグマ)の補正やコントラスト、明るさの調整をします。
レンズを通った電子同士の焦点のずれにより、像がぼけることがあります。これを調整します。
ずれている場合の対処
像の流れ(斜めに引き延ばされた像)がなくなるまで補正する。
非点収差補正を行います。
調整用のつまみがあると思うので、そこを動かして像の流れがなくなればOKです。
●観察画面に白い線が入り、写真が取れない
画像取得の際に線が入ると困ります。せっかく観察しても、不要なノイズが入ることで結果が見にくくなってしまいます。
これは電子の加速電圧が高すぎるときに起こる現象です。
加速電圧を上げて撮影すれば解消します。
●ピントやスティグマ、コントラストなどの調整が難しい
オートで調整してくれる装置を使用している場合は、まずオートを使用すると大体合わせてくれます。
その後に手動で微調整を加えてもよいです。
オート機能がない場合は、低倍率の状態で大げさに調整幅内を動かします。
一瞬でもピントが合ったと思ったら、その付近でピントを細かく動かす、など、おおざっぱから詳細に行く流れで調整するとうまくいきます。
慣れると最初から手動の方が合わせやすく、かつきれいな像がみれます。
まとめ
今回はSEMの原理と使用方法、コツについてまとめました。
役にたてる内容があれば嬉しいです。
以上、イブでした。
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